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2019年12月 3日 (火)

祝詞入門 古語

 一 現代語の弱さ

 よく『祝詞(のりと)は難しいので現代語を用いた方がよい』と誤解する人がある。果たしてそうであろうか。
 現代人は古典・古語を遠ざけたがるが、これは学校教育が古典を疎外したことや、それを後押しした歴史的仮名遣いの軽視に出ていよう。
 よく考えれば解ることだが、〈行く〉〈見る〉〈食う〉など、生活に密着した語は既に奈良時代の文献にも見えるのである。活用(語形変化)や仮名遣いが変っただけ。
 死語・廃語や古今異義語(現代語と意味の異なる語)を思い浮かべるから厄介なのだ。日常用いる語彙の多くは時間の濾過作用を経た古語が生きている。
 
 二 古語の強さ

 「神さま神さま お願いです」、もしもこんな祝詞を上げる神職がいたら、祈願に来た人は『ふざけるな』と思うかも知れない。
 神職なら「乞(こ)ひ祈(の)みまつらく」と述べる。〈請(こ)う〉は現代語にもある(ただし〈のむ〉〈まつらく〉は現代語にはない)。
 ところで〈祈る〉の古語を探してみると〈祈(の)む〉だけではなかった。〈祈(ね)ぐ〉〈念ず〉とも言い、希求する意で〈祈る〉〈嘆く〉がある。そして〈祈る〉はそのまま現代語に生きている。
 ついでに〈願う〉を探してみると、〈乞(こ)ひ願ふ〉〈労(ね)ぐ〉〈思ふ〉〈望む〉〈欲(ほ)りす〉〈欲(ほ)る〉〈求む〉などとある。このうち〈思ふ〉〈望む〉〈求む〉も現代語に残っていて意味が同じだ。
 次に派生的に〈恋しい〉を見てみよう。
 〈恋痛(こひた)し〉〈うら恋し〉〈慕(した)はし〉〈恋ひ余る〉〈思ひ暮らす〉〈籠(こも)り恋ふ〉〈慕(した)ふ〉〈恋しさ〉〈思ひ病む〉〈恋ひ渡る〉〈思ふ〉など、表現の幅が広い。
 まだまだあるが〈恋痛(こひた)し〉〈うら恋し〉〈籠(こも)り恋ふ〉〈思ひ病む〉を除けば、現代でも使われる語ばかりだ。
 古語はこのように幅が広く多様である。信仰の表現に古語が不可欠であることが解ろう。生命力・持続性という点からも古語には力がある。それが〈ことだま〉だ。神職が祝詞に古語を使うのは、その働きへの期待があるからである。

*引用は『現代語で引く古語辞典』(現代神社と実務研究会編)によった。

                              〔「神社発信」に掲載ものを訂正した〕

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