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2019年11月29日 (金)

祝詞入門 万葉仮名

 祝詞は宣命書きを用いて表記される。これは漢字かな混り文の先駆けとなるものである。表意文字としての漢字を大字(普通の大きさ)で表し、その活用語尾や助詞・助動詞などを小字(二分の一か四分の一の大きさ)で記す。狙いは誤読を防ぐことにあった。
  例外的に「神留坐」(かむつまります=神留里坐須)のように送り仮名を省略することはあるものの、あくまでも読み誤らぬためのものなので、小字には音仮名を用いることが多い。その音仮名も「戸」(と・こ・へ)・「都」(と・つ)のように複数の訓があるものは避けるよう心掛けている。 
 誤読といえば「仂」→「働」や「天ゝ」→「天天」のように略字や繰り返し記号(表記の省略)にも配慮が要る。 
また「と」(登・斗)「つ」(津)「を」(乎・遠)などの助詞は、一文の中で何種類も併用せずに同一文字を最後まで用いるのが誤読防止につながる。 
 なおア行の「え」(荏・得)とヤ行の「え」(江・叡・枝)とは、早い時期に区別がなくなっているので共用しても差し支えない。ただしワ行の「ゑ」(恵・衛)はこれらと分けるのがあるべき仮名遣いである。

 次に事例を掲げてみよう。

真名子 ― まなご  *〈真〉〈名〉が万葉仮名。
勢 ― せ  *〈世〉はヨに用いるので不適当。
乞比祈美 ― こひのみ  *〈比〉は「い」ではなく「ひ」、〈美〉は「び」ではなく「み」の仮名。  
奉礼留 ― まつれる  *〈礼〉は「れ」、〈留〉は「る」で〈流〉も可。
任尓 ― まにまに  *〈尓〉は「に」。「爾」も同じ。〈仁〉も可。  
礼代乃幣帛 ― ゐやじろのみてぐら  *〈乃〉は「の」で〈能〉も可。〈之〉は不可。  
乎 ― を  *〈遠〉〈袁〉も可だが画数多く筆書きでは文字が潰れる心配がある。

    万葉仮名で要注意な漢字一覧  

×=仮名遣いの誤用 △=複数の音がある 〇=本来は清音 無印=誤読しやすい

い 以(×)・異(×) う 卯・羽 え 榎・衣(△)・依(△)・絵(×)・穢(×) お 意(△) 

が 加(〇)・可(〇) き 枝(×)・貴・来(△)・支(△)・吉(△)・樹(△)・黄(△) ぎ 支(×)・宜(△) く 来(△)・君(△) ぐ 群・遇・隅 け 家(△)・毛(△)・気(△) げ 下(△)・夏(△)・気(×)・家(×) こ 子(△)・児(△)・固(△)・小・木(×) ご 古(〇)・己(△)・許(△)

さ 狭(×)・三(×) ざ 佐(〇) し 止(×)・四・子・為(△)・至(△)・之(△) じ 之(×)・志(〇)・時(×) す 主・珠・為 ず 須(〇)・殊 せ 是(△) そ 衣(△)・襲・其

だ 太(△)・大(△) ち 地(△)・路(×) つ 豆(△)・頭(△)・図(△) づ 豆(△)・頭(△)・図(△) て 手・低(×)・堤・提 で 田(△)・堤(△)・提(△) と 戸(△)・塗(△)・都(△)・図(△)・門・得(×) ど 止(〇)・等(〇)・登(〇)

に 二・似・丹・耳 ぬ 漏(×)・為(×)・沼 ね 泥 の 努・怒・奴(△)・農(×)

は 羽・葉・者・八 ひ 毘(×)・火(△)・被・彼・妃(△) び 弥(△)・火(×)・飛(×) ふ 富・夫(△) ぶ 部(△)・夫(△) へ 平・弁・陪・経 べ 部(△)・倍・閉(〇)・戸(〇) ほ 富(△)・火(△) ぼ 保(〇)

ま 馬 み 御(△)・微(△)・身 め 名(×)・馬(△)・迷・眼 も 模・裳

や 屋・八・野(△) ゆ 遊 よ 用・依(×)・預・夜(△)・四(△)・吉(△)

れ 列・連・例

ゐ 謂・居・為(△) ゑ 榎(×)・衣(×)・依(×)・絵(×)・穢(×) を 於(×)・越(×)     

                                             (「神社発信」掲載を改訂)

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コメント

ご解説ありがとうございました。

おこたえします。
誤読を防ぐためには楷書が理想です。
火急の場合や現場で追加次項が生じた場合は、時間との勝負ですので、拘っていられないこともあります。

質問ですが、やはり文字の書体は楷書体が最も望ましいでしょうか?

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